運行事業者は現れるのか?新交通システム「上瀬谷ライン」構想の現状は

運行事業者は現れるのか?新交通システム「上瀬谷ライン」構想の現状は

2021-12-01 0 投稿者: mjws編集

みなさんは、「上瀬谷ライン」構想をどこまで知っているでしょうか。横浜市が瀬谷区上瀬谷地域にある広大な空土地を新興都市へ変えていく構想を持っており、付随して公共交通機関の新設により交通状況の改善を模索しているのです。

上瀬谷ライン構想は計画を練られて、周辺市民との意見交換会が開かれるなど取り組みを進めています。しかし、運行事業者を務める団体組織が定まらないなどの問題点が山積みなのです。

今回は、「新交通システム」と考えられている上瀬谷ライン構想の現状についてご紹介しましょう。上瀬谷地域がどのように生まれ変わろうと考えられているのか、現在の交通機関についても触れながら解説します。

1.上瀬谷ラインとは

上瀬谷ラインとはいったいどのような新交通システム構想であるかご紹介します。

1-1.旧上瀬谷通信施設の活用に伴う新交通システム計画

上瀬谷ラインは、横浜市瀬谷区にある「旧上瀬谷通信施設」の土地活用予定に伴って立ち上がった新交通システム計画です。

相模鉄道(相鉄)瀬谷駅と、旧上瀬谷通信施設周辺で新たに駅を設置。およそ2.6kmの距離を地下トンネルおよび地上部に敷かれたレールを使って移動する交通機関を計画しています。

土地活用に伴う産業振興にともない、既存の相模鉄道など公共交通機関を予定している地域まで延伸し、アクセスを容易にしようと考えられているのです。

1-2.旧上瀬谷通信施設の沿革

旧上瀬谷通信施設は、瀬谷区北町・瀬谷町に存在した在日アメリカ海軍基地です。

第二次世界大戦までの戦時中は旧日本海軍による施設が置かれていましたが、1951年にアメリカ軍による土地の戦後接収を受けます。同時に長きに渡ってアメリカ海軍の活動基地が置かれていたのです。

2015年に接収された土地が日本側に返還されて、現在は跡地として利用方法の検討がなされています。

1-3.国際園芸博覧会の開催と産業都市計画

現状、旧上瀬谷通信施設の活用方法で挙げられているのは、国際園芸博覧会の開催と都市計画です。

国際園芸博覧会は花や園芸を通じて地域経済の発展や環境保護などの課題をアピールする場であり、2027年3月から9月の半年間、横浜市で行われる予定となっています。

また、国際園芸博覧会とともに、旧上瀬谷通信施設の跡地を再編して産業や農業、テーマパーク開園などを実施した都市形成を模索しており、上瀬谷ライン構想は都市形成に役立つ新交通システムの期待が想定されているのです。

2.上瀬谷周辺を担う交通機関の現状は

それでは、現在の上瀬谷地域周辺を担う交通機関はどう形成されているのでしょうか。

2-1.鉄道

上瀬谷地域の鉄道交通機関でもっとも最寄りとなるのは、相模鉄道瀬谷駅です。上瀬谷地域とはおよそ3kmの距離があります。

相鉄本線、横浜-海老名間で停車する駅の1つであり、急行・通勤急行・快速・JR直通各停・各停の5種類が停車。

1日あたりおよそ4万5000人の乗降者数(※)があり、横浜市中心と繋がるベッドタウンでもあるのです。

(※2018年度、相模鉄道発表の数値 https://www.sotetsu.co.jp/media/2019/trans/csr/data/pdf/joko2018.pdf)

2-2.バス

バスは、瀬谷駅北口より上瀬谷地域方面のバスが神奈川中央交通(神奈中)により運行されています。

旧上瀬谷通信施設の跡地に最も近いバス路線は「細谷戸第5」行となっており、跡地南部に隣接する「細谷戸住宅」と呼ばれる市営団地を結ぶ路線を1時間あたり3本のペースで運行。

補足として、小田急電鉄江ノ島線鶴間駅(大和市)の東口から上瀬谷方面のバスが走行しており、相模鉄道鶴ヶ峰駅行き途中の「卸センター前」および「桜山」が最寄りとなります。

2-3.自動車

上瀬谷地域を結ぶ自動車移動の路線でまっさきに挙げられるのは横浜市主要地方道18号線、通称「海軍道路」です。

横浜市戸塚区の国道1号線「原宿交差点」から上瀬谷地域、国道16号線を結ぶ路線であり、上瀬谷地域に隣接する倉庫センター街への移動や朝夕の通勤といった経路で利用されています。

旧上瀬谷通信施設付近は、片道1車線の幹線道路となっており、通勤時間帯の混雑が多く見受けられる路線です。

3.上瀬谷ラインを作るメリット・デメリット

ここまで示してきた現状を含めて、新交通システムである上瀬谷ラインを実際に作り、運行した場合のメリット、デメリットを提示してみます。

3-1.メリット「交通需要への対応が容易になる」

上瀬谷ライン構想を実現した際、「交通需要への対応が容易になる」メリットが挙げられます。

旧上瀬谷通信施設の土地活用計画では、2027年開催予定の国際園芸博覧会開催にとどまりません。将来的な産業や農業による地域発展やテーマパーク開設による観光地化をにらみ、年間で1500万人が上瀬谷地域に来訪するよう狙いを立てているのです。

来訪者数が多くなれば、現状のバスや自動車による交通アクセスのみでは限界が生じるでしょう。交通需要の拡大に伴う対応策で、新交通システムである「上瀬谷ライン」構想が手段の1つで挙げられているのです。

3-2.デメリット「通勤ラッシュ時など混雑への対応」

一方で、「通勤ラッシュ時などの混雑」がデメリットで挙げられます。

上瀬谷ラインの車両編成を他に存在する新交通システム「金沢シーサイドライン」(横浜市金沢区)や「ゆりかもめ」(東京都)にと同様に8両編成と仮定。

1時間で上下線最大36本の運転本数を確保した場合、最大でおよそ1万人の輸送能力が想定されています。

2005年に愛知県で開催された「愛・地球博」では、上瀬谷ライン構想と同様に「リニアモーターカー」での会場輸送を実施。しかし、輸送が間に合わず1時間の乗車待ちが生じたなど課題を残しました。

市民との意見交換会では上瀬谷ラインでも朝夕のラッシュ時間帯などでの混雑に対応できるのかどうか、疑問の声が上がっています。

4.上瀬谷ラインの運行事業者は誰がやるの?

そして、上瀬谷ライン構想に残る最大の問題が、「運行事業者」です。

上瀬谷ラインを作る上で、運行事業に参加する団体組織が名乗り出ていないのが現状であり、横浜市は2021年内に決定するとしていました。

「金沢シーサイドライン」を運営する株式会社横浜シーサイドラインは2021年9月、横浜市より運行事業参加を求められましたが、2021年11月に事業への不参加を表明しています。

主な理由に「テーマパークなど開発計画の不透明性」や「採算が見込めない」、「新型コロナウイルス再拡大などのリスクによる金沢シーサイドライン事業への影響」などを挙げました。

現状、市民との意見交換会でも計画への不透明性に疑問を投げかける市民がいる中で、今回の横浜シーサイドラインによる事業不参加意思が明確になったため、上瀬谷ライン構想に暗雲が漂っています。

横浜シーサイドライン金沢シーサイドライン

まとめ

ここまで、新交通システムである上瀬谷ライン構想についてご紹介してきました。

旧上瀬谷通信施設跡地の広大な空間を活用し、新たな都市形成を図ろうとする意図が伝わる一方、交通アクセスに大きな課題があります。

課題を克服すべく、新交通システムを活用した交通機関の整備を狙っていますが、運行事業参加に名乗り出る団体組織が名乗り出ていないのが現状です。

運行事業者が決定しない以上、上瀬谷ライン構想の実現は厳しい状況に変化はありません。

今後、上瀬谷ライン構想はどのように変化し、実現するのか費えるのか注目していきましょう。