モノレールを取り巻く世界情勢〜マニュファクチャラー編〜

モノレールを取り巻く世界情勢〜マニュファクチャラー編〜

2018-09-11 0 投稿者: mjws編集

鉄道等のインフラ輸出という単語も、最近では常に耳にする一般的な単語となった。各国各メーカーは、鉄道インフラの受注獲得に注力し日々しのぎを削っている。かつて鉄道ビッグ3と称されたアルストム、シーメンス、ボンバルディアに加え、近年では中国中車がこれに加わり、いよいよ情勢は混沌としてきた。


モノレールマニュファクチャラー

モノレールを取り巻く環境も刻々と変化を続けているが、いわゆる鉄道とは様相が異なっている。代表的なメーカーを以下に示す。

  • 1.日立製作所
  • 2.ボンバルディア
  • 3.スコミエンジニアリング
  • 4.中国中車
  • 5.BYD

 

日立製作所

東京モノレール

日立製作所は日本が誇る世界的にも有名なモノレールマニュファクチャラー。モノレール開発の黎明期において、ドイツのアルウェーグ社よりモノレールシステムを技術導入した事が、同社モノレール開発の始まりとなる。今日、日本では日本跨座式として知られるモノレールパッケージを引っさげ世界展開を続ける。2018年8月には、パナマに導入が予定されるモノレール路線の契約を正式に受注している。なお、後述するモノレールマニュファクチャラーの世界展開が激しさを増す中、未だ営業路線距離において、日立製作所のモノレール路線距離は世界1位を維持する。

 

ボンバルディア社

  • ラスベガスモノレール

 

ボンバルディア社は本体をカナダ、鉄道部門をドイツに置き、上述した鉄道ビッグ3の一角を担う代表的マニュファクチャラー。ボンバルディア社もまた、モノレールシステムを商品展開するモノレールメーカーとして知られる。ボンバルディア社の商品パッケージは、INNOVIA Monorail 300 Systemと称される跨座式アルウェーグタイプのモノレールで、CITYFLO 650(自動列車制御装置)を組み込んだトータルシステムとして展開する。近年では中国中車とのJV、PBTSを発足させ力を増している。近年のトピックスとして、タイ、バンコクのピンクラインおよびイエローライン、中国蕪湖市の1号線および2号線等、多くの長大路線で契約を締結している。ちなみに上述した4路線の合計距離数は100kmを優に超える。

 


スコミエンジニアリング

KLモノレール

スコミエンジニアリング社は、マレーシアに拠点を置く後発モノレールマニュファクチャラー。詳細は別の機会とするが、同社の成り立ちには日本の日立製作所が強く関係している。同社商品パッケージは、通称スコミ ストラと称されるアルウェーグタイプのモノレールシステム。現行の日立製作所のモノレールがボギータイプのモノレールへと進化しているのに対し、スコミ ストラはオリジナルのアルウェーグモノレールに近い二軸タイプを主とする。契約締結済および建設中の路線にブラジルはサンパウロメトロの17号線および18号線などがある。また現行運営路線として、拠点を置くマレーシアのKLモノレール、インド ムンバイのムンバイモノレールなどがある。

 


中国中車およびBYD

中国中車やBYD等の中国勢の勢いはとどまることを知らない。両社共にモノレールマニュファクチャラーとしては最後発ながら、既に多くの計画路線について契約を締結している。

中国中車では、そのスケールメリットを活かし、各拠点で跨座式モノレールから懸垂式モノレールまでの開発に注力している他、現行モノレールメーカーとの提携も並行し世界展開を進めている。

BYD社は中国の自動車メーカーながら、一昨年にモノレールの商品パッケージ、スカイレール(雲軌)を発表し業界に参入。同社工場内の試験線のほか、第9回中国花博会場内のモノレールを開業させている。直近のトピックスとしてはサルヴァドール市のモノレール路線建設について契約を締結し話題を呼んだ。

(c)BYD

以上が現在世界的にみてモノレールを商品展開しているマニュファクチャラーの一覧となる。実際にはこの他にも多くのモノレールマニュファクチャラーが存在するが、今回の記事では割愛させていただいた。特に当記事の閲覧は日本在住の方が大半を占めていると思うが、湘南や千葉モノレールで採用されている三菱重工を加えなかった事をお詫びしたい。

 


なお、上記に示した跨座式モノレールマニュファクチャラーの全てがアルウェーグタイプのモノレールを採用する。特に日本では、跨座式モノレール=ゴムタイヤ&コンクリート軌道を用いた乗り物と周知されているが、モノレールを取り巻く長い歴史の中では必ずしもそうではなかった。これらのシステムは、アルウェーグ社のモノレールシステムに共感した日立製作所と、今回紹介しなかったウォルトディズニーの主に二社によって存続させられ、さらに磨きをかけ、今日のモノレールの定義を完成させるに至っている。