2026年、モノレールはどこへ向かうのか ― 新路線・技術革新・世界の動きから読み解く最新トレンド ―

2026年、モノレールはどこへ向かうのか ― 新路線・技術革新・世界の動きから読み解く最新トレンド ―

2026-02-09 0 投稿者: mjws編集

モノレールは長いあいだ「一部の都市にある特殊な交通機関」という印象を持たれがちだった。しかし2026年を迎える現在、その立ち位置は少しずつ変わり始めている。都市の再開発、観光需要の回復、環境負荷低減への意識の高まりなどを背景に、モノレールは再び注目される存在になりつつある。

本記事では、2026年前後に見られるモノレールの最新動向を、新路線・延伸計画、技術面の進化、そして世界各地のプロジェクトという三つの視点から整理する。

1. 国内は「新規導入」より「既存延伸」が中心へ

まず日本国内の路線動向に目を向けると、「大規模ネットワーク拡張」というより、「既存路線の延伸」や「都市機能と密接に結びついた短中距離路線」が中心になっていることが分かる。

1-1. 大阪モノレール瓜生堂延伸 制度手続きから開業目標まで

その代表例として挙げられるのが、大阪モノレールの瓜生堂延伸ルートである。大阪モノレール本線は、現在の終点・門真市駅からさらに南へ延び、東大阪市方向へ向かう延伸計画が進んでいる。この「瓜生堂延伸」は単なる路線延長にとどまらず、大阪北部の交通ネットワークを強化する事業として位置づけられている。

事業が最初に公表されたのは2015年頃で、この時点では門真市駅から瓜生堂(仮称)まで約9キロの南伸が計画され、途中に複数駅の新設が想定されていた。延伸区間に駅を設けることで、既存路線と大阪市・東大阪市内の鉄道路線との接続が強化される設計だ。例えばJR学研都市線や近鉄けいはんな線、終点の瓜生堂付近では近鉄奈良線との結節が想定されている。こうした乗換機能は、沿線の利便性向上を狙ううえで重要な要素となる。

工事は2019年頃から本格化したとされる。現場では支柱基礎や軌道桁の製作・架設などが進み、門真市駅以南の緑地帯や道路沿いで工事の姿が見えるようになっている。中央環状線沿いを基調に敷設することから、都市計画道路との調整を含めた工程が続いている。

法手続きの面では、2020年4月1日付で国土交通大臣から工事施工認可を取得したという情報があり、この時点で事業は構想段階を越え、制度上も建設フェーズに入ったと整理できる。

大阪モノレール瓜生堂延伸整備事業(仮称荒本駅~仮称瓜生堂駅間)

開業予定は当初2029年度が目標とされていたが、基礎工法の見直しや物価・人件費の高騰などを背景に2033年度頃へ後ろ倒しとなっている。2024年段階の報道でも工程変更が反映され、約8.9キロの延伸区間の供用は2033年頃とされている。

延伸区間の新設駅はすべて仮称だが、門真市側から「松生町」「門真南」「鴻池新田」「荒本」「瓜生堂」が想定されている。瓜生堂駅では近鉄奈良線との乗換接続が計画され、東大阪市中心部や奈良方面へのアクセス向上が見込まれる。

沿線の稗島に設けられたPC軌道桁製作場ではPC軌道桁の製作が始まっている。

終点付近には新たな車両基地も計画され、既存の万博車両基地と合わせて留置・検査機能を強化する構想が進む。これは延伸と一体で整備される重要インフラで、延伸後の運行体制を支える役割を担う。

姿を現した大型鋼軌道桁(仮称荒本駅~仮称瓜生堂駅間)

以上を踏まえると、瓜生堂延伸は「制度手続きと認可を経て着工し、工事を進めつつ2033年頃の開業を目指す」という流れで進行している。門真市を越えて本線が南伸することで、既存交通網との接続強化と地域内外のアクセス利便性向上が期待される。

1-2. 多摩モノレール箱根ヶ崎延伸 認可取得で「事業のスタートライン」へ

関東地域でも同様の動きが見られる。多摩モノレールでは、北端の上北台からJR八高線の箱根ヶ崎付近へ至る箱根ヶ崎延伸ルートが、いよいよ事業として動き出した。

現在の北方の終点 上北台駅  (c)田村拓丸

多摩都市モノレールの箱根ヶ崎方面延伸は長年議論されてきたが、2025年に大きな進展を迎えた。2025年11月27日付で東京都は「多摩都市モノレール箱根ヶ崎方面延伸に関する都市計画事業の認可」を国土交通省から取得し、これをもって正式に事業に着手したと発表している。これは延伸予定区間を都市計画事業として法的に位置づけ、東京都と沿線自治体が用地取得や道路整備、設計・工事準備へ踏み出すための重要な手続きである。

認可は2025(令和7)年11月27日に告示された。対象区間は現在の終点・上北台駅(東大和市)から武蔵村山市内を経由し、西多摩郡瑞穂町のJR八高線箱根ヶ崎駅付近までの約7.0キロで、沿線には新たに7駅が設けられる予定だ。

もっとも、認可取得が即工事着工を意味するわけではない。都市計画手続きと用地取得には時間を要し、2025年の認可取得によってようやく「事業としてのスタートライン」に立った、と捉えるのが実態に近い。

多摩モノレール箱根ヶ崎延伸ルートの導入道路、新青梅街道  (c)田村拓丸

開業時期については、東京都や沿線自治体の公表では2030年代半ばを目標に計画が進む。東京都は事業期間を2034年度までと想定しており、この頃の開業を目指す。用地取得、環境面の手続き、設計、工事という工程を踏まえると、概ね2034年度頃の供用開始が想定されると整理できる。

新たな終点駅が設置されるJR八高線箱根ヶ崎駅  (c)田村拓丸

1-3. 国内動向のまとめ 延伸が生む「静かな拡張」

全体を通じ、既存モノレールの延伸が目立つのも2026年前後の特徴である。新規導入に比べてリスクが相対的に低く、住民・自治体の理解を得やすいという事情が大きい。すでに街の風景として受け入れられているモノレールが、さらに生活動線へ入り込んでいく。2026年は、そうした「静かな拡張」が積み重なる局面にある。

2. 技術革新 「運行の柔軟性」と「保守合理化」へ

次に技術面を見ると、北九州高速鉄道が運行する北九州モノレールでは、開業40周年を機に国内のモノレールとして初めて無線式列車制御システム(CBTC)を導入する方針が発表されている。これは既存の列車制御を更新し、運行の柔軟性と効率を高めることを狙った取り組みだ。

2-1. 北九州モノレールのCBTC ATCから無線制御へ

従来、北九州モノレールでは自動列車制御装置(ATC)を用い、自動制御は実現していたものの、軌道側設備を介して列車位置や運行指令を管理してきた。ATCは閉そくの考え方に基づき、区間ごとの列車間隔を確保することで安全性を担保している。

これに対しCBTC(Communication-Based Train Control)は、駅側と車上双方に設置した無線装置によって地上・車上間で双方向通信を行い、その情報に基づいて列車制御を行う方式である。地上側が列車位置を把握し、後続列車へ走行可能な位置や速度情報を無線で伝達し、車上側がそれを踏まえて速度制御を行う。

現在は自動列車制御装置(ATC)を用いる北九州モノレール  (c)田村拓丸

導入効果としては、信号設備などの削減による設備のスリム化と保守工数・費用の低減、無線制御を活かした運行の最適化、列車間隔調整や運転時分短縮による輸送力・効率の改善などが見込まれる。環境負荷低減やサービス向上にもつながる可能性がある。

CBTCは地下鉄などでは採用例があるが、モノレールとしての本格導入は北九州モノレールが国内初となる見込みだ。2024年12月に安全性評価が完了しており、今後は車両改修や機器導入などを経て、2027年度頃までに本格導入を目指す計画とされている。導入は単独の更新ではなく、北九州高速鉄道の2025〜2029年度中期経営計画の重点施策の一つとして、車両更新や他システム改善とあわせて進められる方針である。

3. 海外動向 「新都市開発」と「目的特化」が主戦場に

ここからは海外の動向に目を向けたい。海外では、モノレールは依然として新興国・新都市開発の文脈で重要な役割を担う。急速な都市化が進む地域では、短期間で整備でき、視覚的にも分かりやすい交通システムとして選ばれやすい。一方で既存都市への導入では、景観との調和や住民合意がより重視され、デザイン性や静粛性が強く求められる傾向がある。

2026年前後の世界的傾向として特徴的なのは、「万能な都市交通」ではなく「目的に最適化されたモノレール」を導入しようとする姿勢だ。空港アクセス、観光拠点、住居エリアとの接続、再開発地区への導入など、役割を明確にしたプロジェクトが増えている。モノレールの強みと弱みが、より現実的に評価され始めた結果とも言える。

中国 重慶 江北国際空港に導入されたT3AとT3Bを接続するAPM(小型モノレール) 2025年末より本格的に稼働を開始した。

3-1. タイ・バンコク ムアントンターニー支線でイベント需要を直結

タイ・バンコクでは、MRTピンクラインのムアントンターニー方面への延伸(支線)プロジェクトが大きく前進した。ピンクラインはバンコク・ノンタブリー首都圏を結ぶモノレール路線だが、ムアントンターニーへの支線は別枠で計画・建設され、2025年に運用開始の段階に達した。支線は「Muang Thong Thani Line」とも呼ばれ、本線のムアントンターニー駅(PK10)で分岐し、インパクト・ムアントンターニー駅(MT01)とレイク・ムアントンターニー駅(MT02)の二駅を結ぶ約3.0キロの高架区間で構成される。

タイ バンコクでは、ピンクラインの他 イエローラインでもモノレールが採用された。

工事は2022年6月に始まり、2025年5月に一般向け無料試乗を実施したのち、同年6月中旬から営業運転が開始された。狙いは巨大イベント施設「IMPACT」へのアクセス改善であり、都市交通ネットワーク全体の利便性を底上げする効果が期待される。

ムアントンターニー駅(PK10)に到着するピンクライン車両
巨大イベント施設「IMPACT」

3-2. エジプト・カイロ 世界有数の大規模ネットワークが動き出す

エジプト・カイロでは、東ナイル(新行政首都方面)線と西ナイル(第10月6日市方面)線からなる大規模モノレール計画が進められている。完成時には合計約96キロ、約35駅規模の無人運転のモノレールシステムとなる。特に東ナイル線は建設が進み、2025年11月には第一期区間が式典を伴う形で節目を迎えた。定期運行の開始時期はなお調整が続くものの、2026年前半の営業開始が見込まれるとされ、都市鉄道やLRTとの接続を含めて広域交通の軸になることが期待される。

東ナイル(新行政首都方面)線に配置されたモノレール車両

3-3. ブラジル・サンパウロ 遅延を超えて完成局面へ

ブラジル・サンパウロでは、メトロ17号線(Gold Line)が長年の遅延を経て完成に近づいている。コンゴニャス空港とモルンビーを結ぶモノレール路線で、2026年頃の供用開始を目標に、駅設備や電力・通信・制御系統の整備、車両試運転などが進められている。延期の象徴とされてきた計画が動くことは、都市交通の利便性向上に加え、空港アクセス改善の点でも注目される。

モルンビ橋周辺のモノレール支柱の様子(画像右下)。現在は完成している。

3-4. パナマ 運河トンネルを抱える「難工事」路線

パナマでは、パナマメトロ3号線がモノレール方式の大規模路線として建設中である。アルブルックから都市西部へ伸びる約25キロ、11駅規模の計画で、パナマ運河を地下トンネルで横断する区間が技術的なハイライトとなっている。工事は節目を越えつつある一方、当初見込みよりスケジュールが後ろ倒しとなり、段階的に2027〜2028年頃の運行開始が現実的な見通しとして語られている。

3-5. メキシコ・モンテレイ ワールドカップを見据えた建設ラッシュ

メキシコ・モンテレイでは、4号線と6号線という二つのモノレール路線が建設されており、2026年のFIFAワールドカップ開催を意識した工程が注目される。4号線は中心部とサン・ペドロ方面を結ぶ路線として、6号線はより長大な区間として計画され、基礎工事や構造物建設が進行中である。車両輸送の動きも見られ、整備は具体段階に入っている。

メキシコ・モンテレイのモノレール工事

3-6. ドミニカ共和国 サンティアゴで初の本格モノレールへ

ドミニカ共和国では、サンティアゴ・デ・ロス・カバジェロスでモノレール(Monorriel de Santiago)の建設が進む。全長約13.2キロ、14駅の高架路線として整備され、都市の渋滞緩和と移動利便性向上を目的とする。2022年3月に着工し、車両・システムにはAlstom Innovia Monorailが採用される。都市ケーブルカーとも連携する交通網として位置づけられ、完成に向けた最終段階に入っているとされる。

Monorriel de Santiago

4. まとめ 「未来の象徴」から「都市に寄り添う交通」へ

こうして見ていくと、2026年前後のモノレールは決して派手なブームの中にあるわけではない。しかし確実に「次の役割」を与えられ、技術と運用の両面で成熟へ向かっている。その姿は、かつての未来交通の象徴とは異なり、より現実的で都市に寄り添った存在へ変わりつつある。

これから先、モノレールがどのような場所で、どのような形で使われていくのか。その答えは一つではない。だが2026年以降は、モノレールが静かに次の時代へ足場を固めた節目として、後から振り返られるのかもしれない。

Editor: Takumaru Tamura(文章 田村拓丸  MJWS編集室)

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