活躍する事のなかった独自のモノレール
2026-03-09ポソス・デ・カルダス・モノレール
Poços de Caldas Monorail
ブラジル南東部の都市ポソス・デ・カルダスには、完成しながら実質的に運行されることのなかったモノレールが存在する。ポソス・デ・カルダス・モノレールは、市内のバスターミナルと中心市街地を結ぶ都市交通として建設された跨座式モノレールである。しかし開業直後の事故や構造物の崩落などにより、営業運転がほとんど行われないまま現在に至っている。特徴的な点として、現在世界で主流となっているALWEG式モノレールと異なり、独自に開発されたモノレールシステムであった事があげられる。
ポソス・デ・カルダスについて
Poços de Caldas
ポソス・デ・カルダスはブラジル南東部ミナスジェライス州に位置する都市で、サンパウロ州との州境に近い高原地帯にある。標高は約1,200m前後で、温泉資源に恵まれた観光都市として知られている。
19世紀後半から温泉療養地として発展し、20世紀にはブラジル有数の温泉リゾート都市として整備された。市内には温泉施設や公園、歴史的建築物などが多く、観光都市としての性格が強い。

またこの都市は、直径約30kmの巨大な火山地形「ポソス・デ・カルダス・カルデラ」の内部に位置している。古代火山の活動によって形成されたこの地形は、現在の温泉資源や鉱物資源の背景ともなっている。
人口は約17万人で、観光業のほか鉱業やガラス産業なども地域経済を支えている。こうした観光都市としての都市整備の一環として計画されたのが、ポソス・デ・カルダス・モノレールであった。

モノレール計画
ポソス・デ・カルダス・モノレール計画は、1981年8月20日に制定された市法第3119号を根拠として開始された。この法律により、高架式大量輸送システムの建設と運営を民間企業に委ねるコンセッション方式が採用され、契約期間は50年間と定められた。
契約では、建設に必要な土地について市が行政地役権の設定や収用を行うことが可能とされ、工事期間中には税制優遇措置も与えられていた。また契約満了となる2031年には、施設が市の財産として引き渡されることが定められている。
事業は民間企業 J. Ferreira Ltda. が担当し、モノレールの設計・建設・運営を行う計画であった。当初は総延長約30kmに及ぶ都市モノレールネットワークが構想されていたが、実際に建設されたのは約6kmの単一路線のみであった。

路線概要
路線は市北部の長距離バスターミナル Rodoviária から出発し、市中心部へ向かう都市連絡路線として計画された。ルートは市の主要幹線道路 Avenida João Pinheiro に沿って建設され、都市中心部の商業地区へ至る高架ルートとなっている。
駅は約500m間隔で配置され、全体で11駅が設けられる計画であった。都市の主要交通拠点であるバスターミナルと中心市街地を結ぶことで、都市交通の補完と観光客の移動手段としての役割が期待されていた。
営業こそ停止しているが、路線自体は完成しており途中駅もすべて残っている。
Googleマップ 長距離バスターミナル側駅↓
路線データ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 路線名 | ポソス・デ・カルダス・モノレール |
| 所在地 | ブラジル・ミナスジェライス州ポソス・デ・カルダス |
| 開業 | 2000年 |
| 運行停止 | 2003年 |
| 所有者 | J. Ferreira Ltda.(後に市へ譲渡) |
| 運営者 | J. Ferreira Ltda. |
| 路線数 | 1路線 |
| 営業距離 | 約6 km |
| 駅数 | 11駅 |
| 車両数 | 1編成(2両) |
| 軌道形態 | 高架式単線モノレール |
駅(Stations)
(Poços de Caldas Monorail)
Terminal Rodoviário(バスターミナル)
Av. João Pinheiro Oeste
Rio Lambari
Av. João Pinheiro Centro-Oeste
Av. João Pinheiro Centro
Centro Comercial
Praça Dom Pedro II
Balneário
Complexo Hidrotermal
Av. Francisco Salles
Terminal Central(市中心部)
採用されたモノレールシステム
本路線では J. Ferreira Ltda. が独自に開発した跨座式モノレール が採用された。これはALWEG型などの既存の標準モノレールとは異なるローカル開発型のシステムである。
車両はアルミニウム製の2両編成で、コンクリート製の軌道桁の上をゴムタイヤで走行する構造となっていた。軌道は都市道路の中央帯に設置された高架構造で、曲線区間も多い都市型ルートで設計されていた。
事故と計画の停滞
2000年の開業直後、試験走行中の車両がカーブ区間で脱線する事故が発生した。この事故によりモノレールは本格的な営業運転に移行することができず、事実上運行されないままとなった。
さらに2003年には高架支柱の一部が崩落し、約50mにわたって軌道構造が破壊される事故が発生する。これにより路線の一部は完全に失われ、モノレールは未完成のまま放置されることとなった。
一部の軌道は現在途切れた状態になっている。
現在の状況
現在も市内には高架構造物や車両が残されており、都市景観の中で未使用のインフラとして存在している。モノレールの扱いについては長年にわたり政治的議論が続いており、計画の再開や撤去の可能性も議論されてきた。
ただし設備の所有権が民間企業にあることから、市が一方的に対応することは難しいとされている。契約上は2031年に施設が市の財産として編入される予定となっている。

世界のモノレール史の中で
ポソス・デ・カルダス・モノレールは、都市交通計画、民間コンセッション、独自技術開発という要素が組み合わされたプロジェクトであった。しかし完成したにもかかわらず営業運転がほとんど行われることはなかった。
独自システムとして開発されたモノレールが実際の都市交通として活躍する機会を得ることなく終わった事例として、この路線は世界のモノレール史の中でも特異な存在となっている。
文:モノレール・ジャパン(MJWS)編集室
モノレール・ジャパン(MJWS)
MJWS(Monorail Japan Website)は、モノレールを中心とした単軌条交通の調査研究と専門情報の発信を行うメディアです。国内外のモノレールの歴史・技術・都市交通に関する情報を、現地取材と資料調査をもとに発信しています。






