絵で再現された、幻の熱海モノレール熱海駅!?

絵で再現された、幻の熱海モノレール熱海駅!?

2022-04-20 0 投稿者: mjws編集

MJWS編集室雑記

ん?モノレール熱海駅?

2021年12月31日、Twitter上に以下の投稿がツイートされました。発信者は高橋志郎さん。

編集室ではつい先日、幻と呼ばれる熱海モノレールのルートについて、再度現地確認に行くタイミングがありました。この際は地下通路の調査(後述)ではなく、単純にルートを再度徒歩で確認しようとしたものでした。

https://twitter.com/MJWS001/status/1497410355756421126?s=20&t=fjRGvh0Ki1QAboUW1T6uZQ

2月末熱海へ。今回は地下通路ターゲットではなく、ルート全体を歩きました。画像に写る編集室あらさんの足元地下には、熱海駅の直後に配置されていたであろう留置線の空間がのこっているはず??
ルート散歩の様子は編集室あらさんのchannelで配信してます。

この前後でTwitterへの”熱海モノレール”に関する投稿も確認していた最中。つらつらつらとスクロールをしていると“んっ”・・・“んんんっ?!”。

目に飛び込んできたのは、その後モノレール熱海駅の全体感として公開される事になる熱海モノレールの熱海駅の一部でした。編集室 田村(以下Tと略記)は個人的にも絵のタッチが気に入りしばらく眺めていたのですが、よくよく見ていくと…。

未成線等この手の絵では、絵を描かれる方の想像に頼る事が大半であるものの、この絵はそれまでのそれとは、まったく異なっていました。

公開されていた絵はこの時点では完成版の一部。情報量こそ少ないものの、Twitter上で公開されたその“絵”には、熱海モノレールおよび同モノレール熱海駅の構造や、ルートに関する情報がさりげなく、かつ多く盛り込まれていました。

左側から順に流していくと、まず飛び込んでくるのはホーム壁面に配置される駅名標(電光板)。駅名である“モノレール熱海駅”については、“うんうん”と頷くばかりであったものの、その下に示される次駅の名称が“銀座(ぎんざ)”となっていました。

銀座駅の設置が想定されていた付近

熱海モノレールがJR(当時国鉄)の熱海駅前に位置する熱海第一ビルの地下ホームが起点駅として計画されていた事はよく知られています。

終点位置は現在の熱海ロープウェイ付近に至るものとなっていたのですが、この途中となるルート中間駅として、“銀座”“公園前”が配置される予定となっていました。そしてこの絵、その駅名標には、次駅となる中間駅“銀座”の名前が記されていたのです。

銀座の名前の由来

「銀座」の名は、関東大震災復興時に東京の銀座から正式に継承したものであり、戸越銀座に次いで日本で2番目、東京外では初めて「銀座」の名を継承した。かつては譲り受けた数寄屋橋の柳があったが、1950年(昭和25年)の「熱海大火」の際に焼失してしまった。

ウィキペディア(Wikipedia)熱海銀座商店街 より引用

さらに右手に流れていくと、そこに描かれているのは東京モノレールの100形シリーズをベースとするモノレール車両。

東京モノレール100形シリーズ、熱海モノレールへの導入車両はこの100形がベースとなっていたと推察される。
名鉄犬山線へ日本でははじめて導入されたアルウェーグ式車両。東京モノレール100形シリーズのベースとなった。

熱海第一ビルの地下ホームは、その寸法上、当時東京モノレールで使用されていた100形シリーズが1編成(3両固定編成)入るサイズとなっています(その後、都市モノレール法制定により標準化規格として設定される日本跨座式モノレール車両のサイズでは、ビルの構造上収まりきれない)。

熱海第一ビルとモノレール熱海駅の構造推定用資料(B3・B4 概略用)、これまで編集室内で検討で使用したきたもの。左手の青い枠がモノレール車両(連結器部分も枠内に含む)。東京モノレール100形がすっぽり収まるサイズである事がわかる。日本跨座式モノレールで同じことをしようとすると、基本4両編成ユニットとして熱海第一ビルが上下どちらかにもう一つ必要。

また、熱海モノレールは、当時開業したばかりであった東京モノレールの事実上の子会社として発足しており、東京モノレールの営業車両をベースとした車両を、同モノレールへ流用するというのはごくごく自然な流れと考えられます。

つまり、これらの事実を知っている方が、この絵を描いている事に間違いな!と思ったわけです。

当編集室Tは、興奮のあまりそのまま引用リツイート。Twitter上で若干やり取りをさせていただき、やはりよくご存じの方だと思った次第。

2.熱海モノレールの熱海駅、全体絵公開

高橋さんはその後の4月19日に、駅全体を描いた、同熱海モノレール熱海駅(の絵)をTwitter上で公開され、編集室スタッフは三度びっくり。

そこには、想定されるモノレール熱海駅の構造が忠実に再現され、さらには現在の熱海第一ビルに繋がる地下道下に配置されているであろう留置線に、乗客を降ろした後滑り込んでいく途中の状況が描かれていたからです。

中心の建物が熱海第一ビル。黄色がホーム部と推定される箇所。青色が留置線が配置されると推定しいる箇所。高橋さんの絵では、恐らくこの留置線に滑り込んでいっているであろう描写が成されている。

奥手には地下道(国鉄熱海駅側)に上っていく階段も描かれており、当編集室で構造推定を進めていた、まさにそのイメージがそのまま美しい絵として表現されています。

熱海モノレール熱海駅の構造概略図(想定) ビルと国鉄熱海駅、地下通路の位置関係説明用のため、地下駅周りの(柱・階段等)位置関係はざっくりとしたものになっています。

ちなみに、熱海モノレールの熱海駅の入口は、熱海第一ビル内ではなく、先程紹介した地下通路の側面部に配置されていたであろう事が有力視されていて、ここに描かれている階段位置は、まさにこれを正確に表現していました。

熱海第一ビルへ続く地下通路

当室では過去に、この側面に階段入口の痕跡がないか調べられないか?というテーマで、スマートフォンに接続するタイプのサーモグラフィーを導入し、現地に入った事がありました(結果は散々でしたので胸を張って視聴をおすすめするものではありません(参考としてリンクを張ります))。

が、この時の結論としては“入口があるかどうかはこの検証方法では判らない”という事でした。その後も別の方法で確認作業を続けていますが、これについては今後動画などでお知らせできればと思っています。

熱海モノレール熱海駅(となるはずだった)空間は、存在こそ確定しているものの、所有者および管理者との兼ね合いで一般には公開されていません(ただし、存在するのはあくまでも空間のみと考えられます)。

同駅は恐らく、いつか同ビルが解体される事になり、地上にその姿を現さない限り見る事はかなわない”幻”として、今後も語り継がれてるのだと思います。

今回高橋さんが描いた絵で、想定ではあるものの目に見える形で同駅を視覚的にイメージする事ができました。この美しい”絵”を見せて下さった高橋さんには、本当に感謝しかございません。

高橋志郎様…都内某大手ゲーム企業でCGを担当。(Twitterプロフィールより一部抜粋紹介)

文章/田村拓丸(MJWS編集室)  photo・図/MJWS編集室