国内におけるアルウェーグ式モノレールのレジェンド(廃線・名鉄モノレール)

国内におけるアルウェーグ式モノレールのレジェンド(廃線・名鉄モノレール)

2020-05-15 0 投稿者: mjws編集
今も残る名鉄犬山モンキーパークモノレール線の廃線の一部 (c)mjws

モノレール開発の黎明期、愛知県とその周辺県には数多くのモノレール試験線またはこの試験線の意味合いを持たせた路線が誕生した。岐阜県各務原市にはロッキードモノレールの構内試験線、名古屋市東山動植物園にはサフェージ式モノレールの試験線として敷設された名古屋市交通局のモノレール、そして今回ご紹介する名鉄モンキーパークモノレール線。名鉄モンキーパークモノレール線は、国内で始めてのアルウェーグ式モノレールを採用した。

小田急向ヶ丘遊園線のモノレール車両は、各務原試験線で使用されていたプロトタイプ (c)mjws

ロッキード式モノレールは、各務原試験線での試験後、小田急向ヶ丘遊園線および姫路市市営モノレールとして開業するも、いずれの路線も既に廃線。

サフェージ式モノレールは、東山動植物園での試験結果をもって、さらに湘南モノレール、千葉都市モノレールの開業へと繋がっていった。千葉都市モノレールにおいては、未だなお懸垂式モノレールの営業距離としてギネス記録を保持している。

懸垂式モノレールの営業距離ギネス記録を有する千葉モノレール (c)mjws

最後にアルウェーグ式モノレールであるが、この方式は今現在最もモノレールシステムとして成功し、世界中で採用されている方式であると言える。アクセルレナルトウェナーグレン博士の名前の頭文字を取ってアルウェーグ式と名付けられたこのモノレールシステムは、その後、本家ディズニーグループのイマジニア(ディズニーではエンジニアをイマジニアと称する。)によってディズニーアルウェーグ式として、フロリダおよびカルフォルニアにて採用、この製造メンテナンスを引き継ぐ形でボンバルディア社が同社製アルウェーグ式モノレールを商品展開、日本へは日立製作所および名古屋鉄道の手によって導入が成され、上述したロッキード式モノレール、サフェージ式モノレールとともに覇権を争った。

Walt Disney Worldのモノレール(MarkⅥ) (c)itsallgood-stock.adobe.com

なおALWEG社自体も路線建設を行ったが、同社が主導し開業を果たしたのは、トリノ博の単距離路線と今現在も営業を続けるシアトルの2路線であった。

日本国内では、犬山モンキーパークモノレール線(開業当時は、ラインパークモノレール線)開業後、東京モノレール、未成線となった熱海モノレール、万国博の会場輸送モノレールと続き、さらに都市モノレールとして標準規格化された日本跨座(日立アルウェーグ)式モノレールが、北九州、大阪、舞浜、多摩、沖縄の開業へと繋がっていく。

名鉄犬山モンキーパークモノレール線後に開業を果たした東京モノレール (c)mjws

日本国内で確固たる地位を確立した日本跨座(日立アルウェーグ)式モノレールはその後、日本企業の手によって海外へ展開され、重慶(中国)、大邸(韓国)の路線が開業する事となった。さらに今後は、パナマ運河を渡るパナマメトロ3号線(パナマ共和国)の開業も控え、さらなる展開が期待されている。

アルウェーグ式モノレールの海外展開は意外な形で進み、当初マレーシアに導入を予定していた日立アルウェーグ式モノレールが、世界通貨危機の影響で凍結となった後、このシステムを踏襲する形で、地元マレーシア企業(Mトランス)が地元産のモノレールシステムとして商品展開を開始。現在ではScomi社に吸収され、Scomi SUTRA(スコミスートラ)として開発が進められている。クアラルンプールのKLモノレールとして開業した後、インドはムンバイにてMumbaiモノレールが開業、その後もサンパウロメトロ17号線および18号線として開業を予定していたが、この2路線については今現在諸般の事情によって中断している。

KLモノレール(Scomi SUTRA) (c)shutterstock

アルウェーグ式モノレールを語る上で外せないのがやはりボンバルディア社のモノレールシステムだ。同社はディズニー社のアルウェーグ式モノレールにおいて、更新車両を導入後、同社アルウェーグ式モノレールおよび信号通信システム、現在では自動制御システムを含むモノレールシステムを商品パッケージとして、INNOVIA MONORAIL200、現在はINNOVIA MONOAIL300モノレールシステムとして世界展開を進めている。ここ数十年の展開スピードはこれまで以上に凄まじく、サンパウロメトロ15号線という大規模路線の建設を獲得(現在一部営業を開始、残る区間の建設を進める)後、KAFD、タイバンコクのピンクラインおよびイエローライン、エジプトはカイロのモノレール2路線を受注する等、契約獲得の一途を辿っている。さらには中国中社(CRRC)との共同事業として、中国国内の蕪湖軌道交通1号線および2号線(計48km)他、複数の路線も手掛る。

ラスベガスモノレール INNOVIA MONORAIL200 (c)shutterstock

今回は記事が長くなるため割愛するが、ここ数年という単位でみた場合には、sらに後発アルウェーグ式モノレールメーカーが誕生している。BYD社は中国国内企業で、主に電気自動車を製品展開するメーカーである。近年ではアルウェーグ式モノレールについても商品として手掛けるようになり、中国国内のみならず、世界規模で契約を獲得しつつある。

前置きが長くなったが、これらのアルウェーグ式モノレールの試験的意味合いでの開業は本家ディズニーランド、営業線としての実線開業は、本記事のテーマである名鉄犬山モンキーパークモノレール線であった。

日本モンキーパークに保存されている、名鉄犬山モンキーパークモノレール線営業車両 (c)mjws

2008年12月、犬山モンキーパークモノレール線は廃止され、一部の軌道を残し廃線となってしまった。冒頭記載した様に、愛知県およびその周辺県には、モノレール路線を語る上では外せない数多くのモノレールの歴史が詰まっている。名鉄犬山モンキーパークモノレール線は、そんなレジェンド的記録および路線の中でも、モノレールシステムとして大成したアルウェーグ式モノレールの真のレジェンドである。

今も残る名鉄犬山モンキーパークモノレール線の廃線の一部 (c)mjws
名鉄犬山遊園駅のホームでモンキーパークモノレール線の支柱跡を見ることができる (c)mjws
当時の営業車両はモンキーパークに保存されている。 (c)mjws
Monorail channel “犬山モノレール廃線跡 遺構の現在”路線