ドミニカ共和国・サンティアゴモノレールが完成間近

ドミニカ共和国・サンティアゴモノレールが完成間近

2026-07-21 0 投稿者: mjws編集

工事進捗率92.6%、2026年内に営業開始へ向けた最終試験へ

ドミニカ共和国北部の主要都市、サンティアゴ・デ・ロス・カバリェロスで建設が進む「サンティアゴモノレール」が、完成に向けた最終段階に入りました。ドミニカ共和国大統領府が2026年6月12日に公表した情報によると、事業全体の進捗率は92.6%に達しています。同日にはルイス・アビナデル大統領が車両基地や駅施設を視察し、高架橋や駅舎だけでなく、電力、信号、通信、運行管理システムの整備状況を確認しました。

事業主体は、主要な土木工事を2026年8月までに終え、第4四半期から列車を使用した動的試験を本格化させる計画を示しています。2026年12月頃には追加車両が到着し、乗客を乗せずに営業運転に近い条件で列車を走らせる「マルチャ・エン・ブランコ」と呼ばれる試験へ進む予定です。

サンティアゴ市内を縦断する14駅の都市モノレール

サンティアゴモノレールは、市北西部のシエンフエゴス地区から、市南東部のペキン地区までを結ぶ都市交通路線です。人口が集中する住宅地や商業地区、公共施設、交通結節点を北西から南東へ結び、市内の基幹公共交通として整備されています。Alstomや事業主体のFITRAMが公表している路線概要では、本線の延長は約13km、駅数は14駅です。このほか、車両の留置や検査、整備、入出庫に使用する車両基地内の線路が約3.2km整備されます。

完成時の計画輸送力は片方向1時間当たり約2万人で、1日当たり約20万人の利用が想定されています。サンティアゴでは、自動車、バス、小型の乗合車両、オートバイなどが市民の移動を支えてきましたが、人口増加や市街地の拡大に伴い、道路混雑と移動時間の増加が課題となっています。道路交通から分離された専用軌道を走るモノレールを導入することで、地上の渋滞に左右されにくい移動手段を確保し、自動車に集中している移動需要の一部を公共交通へ転換する狙いがあります。

2026年6月時点、高架橋を支える杭4,246本の施工と、軌道を支えるコンクリート桁1,132本の製作が完了しています。柱や基礎の設置も大部分が進み、現在は駅設備、電力供給設備、信号保安装置、通信設備などの整備と調整が中心となっています。

高架構造と地下駅を組み合わせた路線設計

路線の大部分は、既存道路の上空を利用する高架構造で建設されています。地上部の用地取得や沿線建物への影響を抑えながら、大量輸送機関を導入できることがモノレールの利点です。一方、市中心部のモニュメンタル地区では、周辺の都市景観に配慮して地下構造が採用されています。

地下構造が採用されるモニュメンタル地区

モニュメンタル地区には、サンティアゴを象徴する復興英雄記念碑や、グラン・テアトロ・デル・シバオなどがあります。この場所に通常の高架駅や軌道構造物を建設すると、記念碑への眺望や周辺景観に影響を与える可能性がありました。そのため、モニュメンタル地区の駅施設を地下構造とし、交通機能と景観保全の両立を図っています。

Innovia Monorail 300と完全自動運転を採用

サンティアゴモノレールに導入される車両は、Alstomの「Innovia Monorail 300」です。サンパウロ、カイロ、バンコクなどでも採用されている跨座式モノレール車両で、大都市圏における大量輸送を想定して設計されています。サンティアゴ向けの車両は4両編成で、1編成当たりの定員は約580人、最高速度は時速80km。

2024年には先行する2編成がドミニカ共和国へ到着し、完成した一部区間で初期段階の動的試験が行われました。2026年6月からは、追加車両の組み立てがフランス東部のベルフォール工場で進められています。FITRAMの最新発表では、最終的に15編成を導入する計画が示されています。

列車の運行には、Alstomの列車制御システム「Cityflo 650」が採用されます。無線通信を利用して列車の位置や速度を管理するCBTC方式で、運転士を必要としないGoA4の完全自動運転に対応します。通常の走行、駅への停止、ドアの開閉、折り返しなどが自動化され、路線全体の運行状況は指令所から監視されます。計画上の最短運転間隔は90秒で、利用者が集中する時間帯には運転本数を増やすなど、需要に応じた運行が想定されています。

電力設備には、列車がブレーキをかけた際に生じる回生電力を回収するAlstomの「Hesop」も導入されます。回収した電力をほかの列車や駅設備で再利用することで、路線全体の消費電力を抑える仕組みです。Alstomは、条件によっては回生ブレーキで発生する電力の最大99%を電力網へ戻せると説明していますが、実際の回収率は運行状況や設備構成によって変わります。

ロープウェイと接続する統合型の公共交通網

サンティアゴモノレールは、単独の路線として整備されているわけではありません。路線の中央部に設けられる交通結節施設では、2024年3月に開業したサンティアゴ・ロープウェイ1号線と接続します。ロープウェイ1号線は、中央ターミナルからラ・ジャグイータ・デル・パストール地区までを結ぶ約4km、4駅の路線です。

河川沿いや起伏のある地域をロープウェイが結び、市内を縦断する長距離の幹線輸送をモノレールが受け持ちます。地形条件に対応しやすいロープウェイと、大量輸送に適したモノレールを組み合わせ、それぞれの特徴を生かした交通網を構築する計画です。中央ターミナルには、モノレールとロープウェイに加え、路線バス、タクシー、自転車など複数の交通手段が集約され、公共サービス施設や商業施設も整備されます。

運賃や決済についても、モノレール、ロープウェイ、バスなどを共通の仕組みで利用できる統合システムが想定されています。異なる交通機関を円滑に乗り継げる環境が整えば公共交通全体の利便性向上につながります。

主な参考資料:ドミニカ共和国大統領府、サンティアゴ統合交通システム事業主体FITRAM、Alstom公式発表。