多摩都市モノレール町田方面延伸は、どこまで進んでいるのか
2024-03-13延伸ルートの現状と事業化・開業までの道筋
2024年2月15日、一般社団法人町田・相模原経済同友会において、「多摩都市モノレールの現状と町田方面延伸」をテーマにお話しする機会をいただきました。当日の内容は、多摩都市モノレールの全体構想や町田方面延伸ルートだけでなく、導入空間となる都市計画道路、事業化から開業までの行政手続き、想定される開業年度、沿線開発と経済波及効果まで多岐にわたります。
行政が公表する資料からは、道路整備や検討状況を個別に確認できる一方、それらがモノレールの開業までどのようにつながり、どれほどの期間を要するのかは見えにくい部分があります。そこで、多摩都市モノレール既存線、大阪モノレール、箱根ケ崎方面延伸などの実績を共通の基本スキームに当てはめ、町田方面延伸の現在位置と、開業までの時間軸を具体的に整理しました。

国内外のモノレールを調査するMJWS
MJWS(モノレール・ジャパン・ウェブサイト)は、インターネットを中心とする情報発信を通じ、モノレールをはじめとした軌道系交通システムの維持・発展に寄与することを活動理念としています。ウェブサイトやYouTube「Monorail channel」により、国内外の路線、車両、施設、建設・延伸計画、運行会社の動向、関連イベントなどの情報を発信しています。
調査対象は、モノレールの車両や路線概要だけではありません。地域ごとの計画立案プロセス、事業化の判断、道路や駅の整備方法、運行方式、開業後の土地利用や人口の変化なども含め、モノレールが都市や沿線地域に与える影響を記録しています。利点だけを強調するのではなく、事業費、運営、乗り換え、駅へのアクセス、道路との関係、開業後に生じる課題まで含めて検証することを重視しています。
代表を務める田村拓丸は、約30年にわたり国内外のモノレールを調査してきました。多摩都市モノレールについても、既存線が建設されていた1996年頃から現地の変化を記録し、1998年の第1期区間開業、2000年の全線開業までの経過を観察しています。2020年からは町田商工会議所都市整備まちづくり委員会による町田方面延伸の機運醸成活動に参画し、2021年10月に開催された「未来駅シンポジウム」にも加わりました。
日本国内では、新たなモノレール路線をゼロから建設する計画よりも、既存路線の延伸計画が中心となっています。一方、海外では、道路上空を活用でき、急曲線や勾配にも対応しやすい交通システムとして、多くの都市でモノレールの導入が進められています。MJWSでは、マレーシアのクアラルンプールやプトラジャヤ、韓国・大邱、中国・重慶、タイ・バンコクなどを対象に、計画、建設、運行、沿線開発の状況を調査しています。国内外の事例を重ねて見ることで、町田方面延伸を単なる鉄道路線ではなく、道路整備と土地利用を伴う都市計画事業として捉えることができます。

約93キロに及ぶ多摩都市モノレールの全体構想
多摩都市モノレールには、多摩地域の相互連携を強化し、南北方向の公共交通を充実させるため、総延長約93キロの路線網を整備する構想があります。営業中の区間は、多摩センター駅から上北台駅までの約16キロです。1998年11月に立川北―上北台間が開業し、2000年1月には多摩センター―立川北間が開業しました。
多摩地域では、JR中央線、京王線、小田急線、西武線など、都心と郊外を結ぶ東西方向の鉄道路線が発達しています。その一方、南北方向の移動は路線バスや自動車に依存する地域が多く、鉄道同士を結ぶ交通軸が十分ではありませんでした。多摩都市モノレールは、東西方向に延びる鉄道路線を南北に結び、多摩地域内の移動を補完する役割を担っています。
既存線のほかには、上北台駅から箱根ケ崎方面、多摩センター駅から町田方面、八王子方面、是政方面などへの構想があります。箱根ケ崎方面は2020年1月に東京都が事業化を決定し、都市計画と環境影響評価に関する手続きが進められています。
町田方面は、多摩センター駅から町田駅付近までを結ぶ約16キロのルートです。町田市北部には、鉄道駅から離れた大規模団地、学校、大学、スポーツ施設、病院などが点在しています。これらを町田駅と多摩センター駅の双方へ結び、新たな南北交通軸を形成する計画として位置付けられています。

2021年に決定した町田方面延伸ルート
町田方面延伸については、2016年4月に公表された交通政策審議会答申第198号を踏まえ、東京都が2019年に「多摩都市モノレール町田方面延伸ルート検討委員会」を設置しました。対象となったのは、導入空間となる道路が確定していなかった多摩市南野から町田市忠生付近までの区間です。
委員会は2019年10月から2021年12月までに4回開催され、複数のルート案について、交通需要、速達性、費用便益、自然環境、沿線まちづくりなどの観点から比較が行われました。2021年12月27日には、B案を選定した結果が東京都から公表されています。
交通政策審議会答申では、多摩センター―町田間は約13キロと想定されていました。これに対して、選定されたB案は小山田緑地を直接通過せず、野津田公園や町田市立陸上競技場付近を経由するため、延長は約16キロとなります。主な通過地点には、多摩センター駅、多摩市南野、町田市小野路町、野津田町、町田市立陸上競技場、日大三高、小山田桜台団地、桜美林学園、木曽山崎団地、町田市民病院、芹ヶ谷公園、町田駅周辺などが想定されています。
ルートの骨格は決まりましたが、支柱や軌道桁を道路上のどの位置に配置するのか、駅を何カ所設けるのか、駅舎をどのような構造にするのかといった詳細は、今後の設計や都市計画手続きによって具体化されます。

最短距離よりも沿線の発展を重視したB案
ルート検討委員会では、A案、B案、B’案、C案の4案が比較されました。A案とC案は延長約13キロで、多摩センター駅と町田駅を比較的短い距離で結ぶ案です。B案とB’案は野津田公園や町田市立陸上競技場周辺を経由するため、延長が約16キロとなります。

資料上、A案は需要約8万人/日、費用便益比約1.4、B案は需要約7万5,000人/日、費用便益比約1.1、C案は需要約7万3,000人/日、費用便益比約1.4とされています。費用便益比は、移動時間の短縮や交通混雑の緩和など、社会全体が得る便益を建設費や維持管理費などと比較した指標です。運賃収入による運行事業者の収支とは異なる評価ですが、各ルートの社会的な効果と費用を比較する重要な材料になります。
B案は最短ルートではなく、速達性や建設費では約13キロの案より不利になる可能性があります。一方、町田市立陸上競技場、学校、大規模団地、大学、病院など、市内の主要な拠点を広く結ぶことができます。現在存在する交通需要を取り込むだけではなく、駅周辺のまちづくりや団地再生によって新しい利用者を生み出せる可能性が重視されたルートです。
町田方面延伸は、多摩センター駅と町田駅を短時間で結ぶことだけが目的ではありません。町田市北部に新たな公共交通軸を形成し、既存の住宅地や公共施設を再編しながら、沿線全体の都市構造を変えていく計画です。駅周辺への住宅、商業、医療、福祉、教育機能の誘導や、バス路線の再編を並行して進めることが、B案の事業性を高めるうえで欠かせません。
町田駅側で進む都市計画道路の整備
都市モノレールは、支柱と軌道桁だけを独立して建設するものではありません。支柱、軌道桁、駅舎、避難設備などを設置する空間を確保するため、道路、駅前広場、歩道、交差点、バス乗り場などと一体的に計画されます。
町田駅から芹ヶ谷公園方面へ向かう区間には、「町田都市計画道路3・4・11号停車場成瀬線」があります。対象は原町田五丁目交差点付近から芹ヶ谷公園方面までの約0.52キロで、2021年5月に町田市による整備計画説明会が行われました。町田駅付近は建築物、道路、歩行者空間が集中しているため、軌道の線形や駅の位置、既存道路との接続を含め、慎重な設計が必要となる区間です。

町田市民病院付近では、「町田都市計画道路3・3・36号相原鶴間線」の整備が進んでいます。木曽団地南交差点から町田市民病院東交差点までの旭町工区は、延長約0.8キロです。旭町陸橋を含む難工事区間として長期間にわたり整備が続けられ、2024年3月23日の交通開放が予定されています。

旭町工区は、将来のモノレール導入空間となる可能性を持つ一方、町田街道の交通分散、町田市民病院へのアクセス改善、災害時の輸送経路確保といった道路本来の目的も持っています。道路整備はモノレール本体の着工とは異なりますが、延伸実現に必要となる導入空間を先行して整えている点で重要な意味があります。
町田市民病院付近から中町の鶴川街道交差部へ向かう区間では、町田3・3・36号相原鶴間線「高ヶ坂Ⅰ期」の道路事業が進められています。延長は約0.99キロで、2020年9月に事業概要と用地測量に関する説明会が行われ、2021年12月20日に事業着手が発表されました。道路幅員は25メートル、4車線で都市計画決定されており、事業施行期間は2031年3月31日までとなっています。
町田市は2019年に「多摩都市モノレール町田方面延伸加速化プロジェクト」を立ち上げ、同年10月には中町四丁目にある約1,000平方メートルの土地を先行取得しました。将来、東京都が行う道路整備の用地として活用することを見据えたものです。事業化決定を待ってからすべての用地交渉を始めるのではなく、取得可能な土地を先行して確保することで、将来の整備期間を短縮する効果が期待されます。

都市計画道路の番号が示す意味
「町田3・3・36号」や「町田3・4・11号」といった都市計画道路の名称には、道路の区分、規模、一連番号が示されています。「町田3・3・36号」の最初の「3」は、道路の区分が幹線街路であることを表します。中央の「3」は代表幅員が22メートル以上30メートル未満であることを示し、最後の「36」は町田都市計画区域内で付けられた一連番号です。
「町田3・4・11号」の場合、最初の「3」は同じく幹線街路を意味します。中央の「4」は代表幅員が16メートル以上22メートル未満であることを示し、「11」は町田都市計画区域の11号線という意味になります。
都市モノレールの軌道部分は、都市計画上「特殊街路・都市モノレール専用道」として位置付けられます。道路番号の最初に付く「9」は都市モノレール専用道を示し、中央の数字は都市計画上の代表幅員を表します。
町田方面延伸が都市計画決定された場合の名称例として、資料には「町田9・6・1号多摩南北線」を掲げています。「9」は都市モノレール専用道、「6」は代表幅員8メートル以上12メートル未満、「1」は一連番号を示します。これは都市計画道路の番号制度を説明するための想定名称で、現段階で正式に決まっているものではありません。

道路が完成していなくてもモノレールは建設できる
都市モノレールは、完成済みの道路にしか建設できないわけではありません。道路とモノレールを同時に新設することや、既存道路を拡幅しながら支柱、軌道桁、駅舎を整備することも可能です。必要なのは、現地に道路が存在していることではなく、モノレールを設置できる空間が都市計画道路として確保されていることです。

北九州モノレールの沿線には、モノレールの建設と同時に幹線道路を整備した区間があります。建設前の写真には軌道下の道路が存在していない場所もありますが、現在はモノレールと道路が一体となった都市空間が形成されています。道路がないこと自体が建設できない理由になるわけではなく、都市計画として道路とモノレールをどのように位置付けるかが重要です。
必要となる道路幅員も一律ではありません。支柱だけを設ける一般部と駅舎を設ける駅部では必要な空間が異なり、車線数、中央分離帯、歩道、自転車通行空間、階段、エレベーター、避難設備などによって道路全体の幅員が変わります。基本的には十分な幅員を持つ都市計画道路が求められますが、最終的には区間ごとの道路構造とモノレール施設を組み合わせて検討することになります。
多摩センター側に残る導入道路の課題
町田駅側で都市計画道路の整備が進む一方、多摩センター側から小野路、野津田、忠生方面にかけては、導入空間を具体化するための課題が残されています。この区間では、町田3・4・20号、町田3・4・40号、町田3・4・18号、町田3・4・22号など、複数の都市計画道路を通過することが想定されています。」

既存の都市計画道路が設定されている区間でも、現在の計画幅員ではモノレールの支柱や駅施設を設けるための空間が不足する部分があります。道路を拡幅する場合には新たな用地取得が必要となり、沿道の住宅、施設、交差点、自然環境などへの影響も検討しなければなりません。
町田市立陸上競技場周辺には、都市計画道路自体が設定されていない区間もあります。この部分では、既存道路を単純に拡幅するのではなく、新しい道路の位置や構造を都市計画上定める必要があります。野津田公園や小野路周辺には自然環境や歴史的な街並みも残されており、モノレールの導入空間を確保しながら、周辺環境への影響を抑える線形が求められます。

東京都は2023年度、「多摩地域における都市計画道路調査委託」を実施しました。対象は、多摩市南野から町田市忠生付近までの約7.7キロです。道路の線形、幅員、構造などを検討するための前段階に当たり、選定されたルートを実際の都市計画道路へ落とし込むための作業が始まったことを意味します。
沿線まちづくりと交通需要の形成
町田市と多摩市は2022年8月、「多摩都市モノレール町田方面延伸沿線まちづくり検討会」を設置しました。モノレールの導入だけを考えるのではなく、駅周辺の土地利用、団地再生、交通結節機能、歩行者空間、バス路線、地域拠点などを一体的に検討する取り組みです。
2023年12月から2024年1月19日まで、「モノレール沿線まちづくり構想(素案)」に対するパブリックコメントが実施されました。B案は、最短距離や速達性よりも、町田市北部の主要施設や住宅地を広く結ぶことを重視したルートです。そのため、沿線まちづくりを実際の交通需要へ結び付けられるかどうかが、事業性を左右します。
駅周辺への住宅や生活関連施設の誘導、大規模団地の再生、学校・大学・スポーツ施設との連携、町田市民病院へのアクセス改善、路線バスやコミュニティバスとの接続を一体的に進めることで、モノレールを日常的に利用する人口を増やす必要があります。
駅を設置するだけで、自動的に地域が発展するわけではありません。駅周辺にどのような都市機能を集め、徒歩、自転車、バス、自動車からモノレールへ乗り継ぎやすい環境をつくるかによって、利用者数と沿線への波及効果は大きく変わります。
都市モノレール開業までの基本スキーム
都市モノレールの開業には、行政側と運行事業者側の双方で複数の手続きが必要となります。行政側では、ルート検討を経て事業化を決定し、ルート設計、都市計画素案、住民説明、都市計画案と環境影響評価書案の説明、環境影響評価書の提出、都市計画決定、都市計画事業認可、用地取得、工事へ進みます。

運行事業者側では、軌道法に基づく特許申請や工事施行認可を取得し、車両、電力、信号、通信、運行管理設備などを整備します。道路、支柱、軌道桁、駅舎などの骨格部分は行政側がインフラ部として整備し、車両や運行設備などは運行事業者がインフラ外部として整備する形が基本となります。
各段階には一定の期間が必要です。行政から具体的な開業年度が示されていない計画でも、過去の都市モノレール事業がどの工程を、どれほどの期間で通過したのかを照合すれば、おおよその時間軸を算出できます。
その基準として用いているのが、都市モノレールの建設期間を延長1キロ当たりおおむね1年として捉える方法です。路線延長に1年を掛けて基本となる工事期間を算出し、複数工区の同時施工、用地取得、道路整備との並行作業などを考慮して、現実的な開業時期へ絞り込んでいきます。行政が明確な開業年を示せない段階から、既存事例を基に将来の時間軸を可視化するための分析指標です。
多摩都市モノレール既存線に見る「1キロ・1年」
現在営業している多摩都市モノレールでは、1987年に都市計画原案と都市計画案の説明会が行われ、1989年に都市計画決定となりました。1990年に第1期区間、1991年に第2期区間の都市計画事業認可を取得し、立川北―上北台間が1998年11月、多摩センター―立川北間が2000年1月に開業しています。
路線延長は約16キロです。1キロ当たり約1年を当てはめると、基本スキーム上の期間は約16年となります。一方、実際には1987年の都市計画に関する説明から2000年の全線開業まで約13年で整備されました。
基本スキームよりも早く完成した理由は、工事を第1期区間と第2期区間に分け、用地取得や支柱、軌道桁、駅舎などの整備を複数の場所で並行して進めたためです。全線を一方向から順番に施工するのではなく、複数工区を同時に進めることで、路線延長から算出した期間を短縮できます。
1キロ当たり約1年は、開業年を機械的に固定する数字ではありません。事業規模を測る基本単位として用い、工区分割や並行施工による短縮効果を加えることで、現実的な工程を導きます。多摩都市モノレール既存線は、この考え方を実際の建設経過から確認できる事例です。

大阪モノレール延伸との照合
大阪モノレールの門真市―瓜生堂間延伸は、延長約8.9キロです。大阪府は2016年1月に延伸事業化の意思決定を行い、2018年に都市計画素案説明会と軌道法に基づく申請、2019年3月に都市計画決定と軌道法特許、2020年に都市計画事業認可と工事施行認可を取得しました。

開業目標は2029年で、事業化決定から開業まで約13年です。基本スキーム上では、都市計画や認可に必要となる期間に、8.9キロへ1キロ当たり約1年を適用した約9年の工事期間を加えると、2029年から2030年頃の開業となります。
実際の開業目標がこの範囲に収まっていることから、1キロ当たり約1年という考え方は、都市モノレール事業全体の時間軸を読み解くうえで一定の精度を持つことが確認できます。

箱根ケ崎方面延伸から読み取れる開業年度
箱根ケ崎方面延伸は、上北台駅からJR八高線箱根ケ崎駅付近までの約6.9キロを整備する計画です。東京都は2020年1月に事業化を正式決定し、同年から基本設計に着手しました。2022年10月には都市計画素案説明会、2023年12月には都市計画案と環境影響評価書案に関する説明会が行われています。
基本スキームに当てはめると、都市計画決定は2024年頃、事業認可は2025年頃、工事期間は2026年から2032年頃となります。延長6.9キロに1キロ当たり約1年を適用すると、工事期間は約7年となり、開業は2033年頃と算出できます。
東京都は2030年代半ばの開業を目指す方針を示しています。基本スキームから導かれる2033年頃という推計と、行政が示す2030年代半ばという時間帯はおおむね重なります。行政が幅のある表現で開業時期を示している段階でも、事業工程を分析することで、より具体的な開業年度を読み取ることができます。

箱根ケ崎方面の導入道路については、事業化決定時にすべての用地取得が完了していたわけではありません。資料上、事業化決定直前における用地取得率は区間によって最大約28%で、2023年時点でも最大約54%となっています。
道路が全線完成し、用地取得率が100%に達しなければモノレールを事業化できないわけではありません。事業化後に設計、都市計画、用地取得、道路工事、モノレール工事を並行して進めることができます。この点は、導入道路の整備途中にある町田方面延伸を考えるうえでも重要です。
ルート約16キロのうち10.01キロで動きが進む
町田方面延伸は基本スキーム上ではルート検討の段階にありますが、周辺ではすでに具体的な取り組みが進んでいます。

2013年には町田市と市内関係団体による「多摩都市モノレール町田方面延伸促進協議会」が設立されました。2019年6月に町田市が延伸加速化プロジェクトを開始し、同年10月には中町四丁目の土地を先行取得しています。同じ2019年には東京都がルート検討委員会を設置しました。
2021年には町田3・4・11号停車場成瀬線の整備計画説明会と、町田3・3・36号相原鶴間線高ヶ坂Ⅰ期の事業着手が行われ、同年12月に延伸ルートが決定しました。2022年には沿線まちづくり検討会が設置され、2023年には多摩市南野から町田市忠生まで約7.7キロの都市計画道路調査が始まっています。
供用済み、事業中、計画中、調査中の区間を合わせると、延伸ルート約16キロのうち10.01キロ、全体の62.6%が何らかの実作業の対象となっています。これはモノレール本体の工事進捗率ではありませんが、道路整備や調査、用地取得が広い範囲で動き始めていることを示す指標です。

町田方面延伸の開業想定年度は「2043年+α」
東京都から町田方面延伸の具体的な事業化年度や開業年度は示されていません。しかし、多摩都市モノレール既存線、大阪モノレール延伸、箱根ケ崎方面延伸がたどった基本スキームを用いることで、開業までの時間軸を算出できます。
仮に2026年に町田方面延伸の事業化が正式決定された場合、ルート設計、都市計画素案、住民説明、環境影響評価、都市計画決定、事業認可などを経て、2032年から2033年頃には本格的な工事段階へ入ることが可能と見積もられます。

町田ルートは約16キロです。1キロ当たり約1年をそのまま適用すると16年となりますが、既存の多摩都市モノレールは、第1期区間の工事開始から第2期区間の完成まで、約16キロをおおむね10年の実工事期間で整備しています。複数工区で同時施工した実績を町田方面延伸に当てはめ、工事期間を約10年と設定しました。
2033年頃に本格工事へ入り、約10年間の施工期間を見込むと、開業想定年度は2043年+αとなります。「+α」は、都市計画決定、導入道路の調整、用地交渉、関係機関との協議などに必要となる期間です。
2043年という数字は、事業化決定を2026年と仮定し、行政手続きに要する期間、多摩都市モノレール既存線の施工実績、約16キロという路線延長、複数工区の並行施工を組み合わせて算出したものです。行政から開業年度が示されていない段階だからこそ、既存事例と基本スキームを用いて、実現までに必要となる時間を可視化する意味があります。
「2043年+α」が意味するもの
2043年+αという開業想定年度は、延伸が遠い将来であることだけを示す数字ではありません。都市モノレールは、事業化決定から開業までに長期間を要するため、事業化の時期を早めることが、そのまま開業時期の前倒しにつながります。
事業化決定が1年遅れれば、その後の都市計画、環境影響評価、事業認可、工事開始も後ろへずれる可能性が高くなります。一方、導入道路の調査、用地の先行取得、沿線まちづくり、関係自治体との調整を事業化前から進めれば、決定後の工程を短縮できます。
町田方面延伸に、解決が不可能な課題が残されているわけではありません。道路、用地、環境、需要、採算性など、必要な課題をどの順序で、どれだけ早く処理するかが問われています。2043年+αという数字は、完成年度だけでなく、今から積み重ねるべき作業量と時間を示すものでもあります。

北九州モノレールに見る沿線の変化
モノレールと道路を一体的に整備した事例として、北九州モノレールの建設前後の沿線変化を確認しました。北九州モノレールは、小倉都心部と小倉南区の企救丘を結ぶ跨座式モノレールで、都市モノレール法に基づく第1号路線として1985年に開業しました。

企救丘、志井、北方などの沿線では、建設前に農地や未利用地が残されていた場所に、モノレールと幹線道路が整備され、その後、住宅、マンション、店舗などが立地しています。軌道下に道路が存在しなかった建設前の写真と、モノレール、道路、住宅地が形成された現在の写真を比較すると、交通基盤の整備と市街地形成の関係がよく分かります。

沿線の変化には、モノレールだけでなく、道路整備、土地利用計画、住宅需要、民間開発など複数の要素が関係しています。そのため、モノレール単独の効果と捉えるのではなく、公共交通と幹線道路、住宅地開発を一体的に進めた沿線まちづくりの事例として見る必要があります。
町田市は、北九州モノレール建設当時の沿線地域と比べ、すでに住宅地や公共施設が集積しています。町田方面延伸では、新しい市街地をゼロから形成するよりも、木曽山崎団地や小山田桜台団地などの再生、病院や学校へのアクセス改善、駅を中心とした生活圏の再編が大きな役割となります。
年間約412億円とされる経済波及効果
町田市は2018年6月、多摩都市モノレール町田方面延伸に伴う経済波及効果について、行政報告資料を公表しています。試算による経済波及効果は、年間約412億円です。
定住人口は約3,805人、事業所数は236カ所、従業人口は4,025人程度増加すると推計されています。ここで示される約412億円は、モノレール会社の運賃収入や町田市の税収そのものではなく、人口、事業所、消費などの増加によって、市内産業に継続的に生じると見込まれた経済効果です。
建設工事中だけに発生する一過性の効果ではなく、開業後の定住人口や事業所、従業人口の増加を通じて、地域経済へ継続的に影響する点が重要です。モノレールの役割は、移動時間を短縮することだけではありません。駅周辺に人や施設を集め、沿線で新たな消費や事業活動を生み出すことで、都市全体の経済構造にも影響を与えます。

事業化決定に向けて求められるもの
町田方面延伸は、2021年12月にルートが決定し、町田駅側ではモノレール導入道路となる2路線の整備が進められています。多摩センター側の約8キロについても、都市計画道路が設定されていない区間や幅員不足の区間を対象に、東京都による調査が始まりました。
ルート選定、用地の先行取得、都市計画道路の整備、北側区間の調査、沿線まちづくり構想の検討という複数の動きが、事業化決定に向けて積み重ねられています。現状は、東京都による事業化決定を待つ段階にあります。
大規模な交通インフラは、行政機関の内部だけで実現するものではありません。箱根ケ崎方面延伸でも、沿線自治体、地域住民、経済団体などが長年にわたり機運醸成活動を続けたことが、事業化へつながる大きな力となりました。
町田方面でも、沿線地域がモノレールを必要としていることを継続して示し、開業後にどのようなまちをつくるのかを具体化する必要があります。行政、交通事業者、経済団体、学校、病院、スポーツ施設、団地、地域住民が将来像を共有することで、事業化の判断を後押しする環境が整っていきます。
町田方面延伸の成否は、車両や軌道の技術だけで決まるものではありません。約16キロの新しい南北交通軸をどのように沿線の再生へつなげ、将来にわたって利用される路線に育てるのか。その具体像と地域の機運が、事業化、そして2043年+αと想定される開業へ向けた重要な鍵となります。







